*Tour of the DRAGON 名古屋公演*


 1年ぶりの名古屋。強行軍がたたりぐったり疲れていたため、混雑が心配だったのだが、名古屋は全体的におっとりした雰囲気で、人と人の間隔が開演前ということを差し引いても随分広い。そういえば去年も名古屋は客が上品で、それでいてノリは熱かったのだと思いながら開演を待つ。なんだかBGMがいつもかかっている曲と違うと思いつつ、友人とのトークに夢中でなんの曲だったのか覚えていない。思えば、このことも、これから始まるLiveの予兆だったのだ。

 暗くなり、いつもの菩提樹の前奏が始まったように思う。
いつものつっこの声のナレーション「ア・キ・ですね。子供の頃・・・私の大切な青春の1ページです。」
 幕が落ちる。菩提樹がくる!と息を吸い込んで身構えた瞬間、始まったのは間違えようのない前奏。クレマチスだ!(終演後、お品書きを確認したところ「順不同」と書いてあった。だからきっとそこにいた全員が驚愕したに違いない)
 初めて生で聞くクレマチス。唄いはじめから高音で難しい曲だと思うのによどみなく唄うつっこ。今までの「あー、辛そうだな。大丈夫かな」とハラハラする雰囲気は全くなく堂々としていた。
 つっこが変わった…とちょっと唖然としているうちに始まった鮫。これも吐血しそうな激しさではなくキーが高い部分も危なげなくこなす。鮫はCDで聴くよりも生の方が遥かに良い。

 ここでMC。「いつも名古屋に来ると天むすを差し入れしていただくんですけど…今回はひつまぶしが食べたいなと…」いつも差し入れをしてくださる名古屋の関係者の方にリクエストをしたらしい。ここで、ひつまぶしをおねだりする口調を再現するつっこ。すごく小声で手を口の横にあて「ひつまぶし!」客席からおこるクスクス笑い。高いものねだってるなぁと思いつつ次に言った「持ってきてくれたかなぁ・・・ひつまぶし」という話し方の可愛らしさに私もくすりと笑ってしまう。おねだりが嫌味じゃないあたり、この話をMCで話して暖かい笑いがとれるあたりが、この人の不思議さだなぁと思う。

「懐かしい曲をやります。青紫」

沸き返る客席。プライベートライオンリターンズ1日目にやったきりなので、7ヶ月ぶりか。夏の陣でも音の倉でもインストアでも随分やっていなかった人気曲。そういえば氷の美Showではチャイナドレスに羽扇子を持ってディスコ調にこの曲をやったのだった。今回は基本に忠実に…と思わせて、ベースとギターがものすごくかっこよくなっている。

 このままLDへ。振り付けは健在。名古屋はノリは良いものの人が押し寄せてくる感じではないため、一緒に踊ってハートマークを作る隙間があるのが嬉しい。人差し指と小指をたてたハートの作り方がまたかわいいなぁと思う。

 書き忘れていたが、今回つっこの衣装は、蝶PVで使われていた赤の着物にジーンズ。直接見ると袖の長さが違うのがよくわかる。袖もきちんと縫われてはおらず、布が切りっぱなしで手首のところにだけしつけをかけ、手を動かす度に布が柔らかくひらひらと動くようになっている。靴は紫のヒールの高いブーツ。髪はストレートに耳上の上半分の髪を後ろでお団子にし、そのお団子に笄(こうがい)を真横に刺し通してある。笄は黒地に金の模様がはいっているように見えた。素晴らしくかわいらしい(蝶のPVの赤い衣装の髪型にかなり近いと思う。笄は別なものだと思うが。)

 時計台の鐘のあと、舞台はアコースティックコーナーの準備。懐かしのJJのミニドラムセットも準備完了。再びMC。3rd Albumで「コイ」という曲を書いたらしい。
「私の曲では大体、その曲にちなんだ効果音が入っているんですけど…スタッフに「コイ」と言ったら、皆さん魚の編の鯉だと思ったらしく…『鮫の次は鯉か!』と。」スタッフだけじゃありません。多分、お客さんの85%は頭の中に「鯉」が浮かんでいたはず。
「それで、鯉の『パクッパクッ』という音を撮りにいかなきゃいけないんじゃないかって…」口をすぼめて鯉のぱくぱく音を真似するつっこに会場は大笑い。
その後は、鯉つながりで、子供の頃、鯉のぼりにつかまったら空を飛べると思っていた話をしていた。捕まって落ちて肘を複雑骨折→入院したそうだ。「小学3年生の時のことでした。」

 アコースティックコーナーでライオン。元々静かな曲だけに、アコースティックでの演奏がはまる。I love you so much, I love you sorry の部分が胸に響いて切ない。

 メンバー紹介をし、再度MC。蝶のPV裏話だ。

 PVの時はわりと役に入り込んでしまう方だというつっこ。メイクを直しているときに演出の方から、壁に手をついて立ち上がるシーンについて「もっと薄くね」と注文がはいる。役に入り込んでるつっこは、無表情というか怖い顔のまま「はい」と答えたそうだ。「薄くってどういうこと?」と不審に思ったメイクの大平さんが「つっこちゃん、今のわかったの?」と聞くと、つっこはその怖い顔のままぼそりと「わかんない」
「でも、わからないなりに、ちょっと薄くなっていると思います」と締める。その後しばらく現場で「薄く」が流行ったそうだ。

 次も珍しい曲。B.G.胸キュンタイプ。これは2002年5月の音の倉で歌われたきり、披露されてこなかった曲。B.G.はずっとメインを張っていた曲だったので、胸キュンタイプではずす…ということができなかったのだろう。

 「以前、どこかのライブで『つっこちゃん猫みたい』と言われたことがあるんですけど…」それは、夏の陣大阪だと記憶している。大阪は掛け声がよくかかる。「友人に言わせると猫というより『鳩みたい』」…鳩ですか???「動きが線ではなくて点だと…」そこで動いてみるつっこ。納得したのかどっとおこる笑い声。「猫でも鳩でもなく…人間です」

 「胸キュンつながりでYMOで『君に、胸キュン。』」ナツメロカバーはいつも、こちらの想像の範囲を超えている。アコースティックコーナーが始まってから、Rieさんが膝になにやら黄緑っぽく見える球状のものを乗せていて気になっていたのだが、ふと見るとRieさんの右手にアヒルがいて、リズムに合わせてきゅっきゅ、きゅっきゅと上下している。マラカスなのだろうか?目が離せない…とアヒルを凝視していたら、最後の締めの「きゅんっ」をあっきーがやり、フイをつかれて咽た。(男の方は、Rieさんの胸元から目が離せなかったのでは?透ける黒の長袖に紫のタンクトップを重ね着していて、非常にセクシーだった。横からのブラチラも確認。きゅんっ)

 ここでアコースティックコーナーが終わり、11月12日発売予定のSingle蝶で後半スタート。サビで赤い紙ふぶきが舞い散り、幻想的な美しさになる。続いて人形、菩提樹、ミサイルと駆け抜け、MCで言っていた「恋」にうつる。

前奏の振り付けからして、ドギモを抜かれる。両腕を重ねてまるで「UFO!」とでも歌いだしそうなのだ。歌に入ってからも、ずっと振り付けつきで踊りつづけるつっこ。その振り付けがまた時代を間違えてそうなくらいダサダサで可愛らしい。♪10秒だけのランデブー♪歌詞は殆ど聞き取れなかったものの、痛い曲が多いと言われているサードでほっと一息つける曲になりそうだ。

次曲はスナイパー。このあたりになると秘めた熱さの名古屋会場も、秘めた本性を剥き出しにしてノリノリである。やっぱり名古屋はいい!

恒例のスナイパーの後の拳銃アクションはなく「みんな大丈夫!?」と確かめたあと、トムパンクスに突入!

 「Tour of the DRAGON。この曲なくしてはできなかった曲です。龍。」ツアーの核、アルバムの核になる曲の登場だ。壮大で壮絶。始まりの感じでは切ない曲になるのかと思いきやそんなことはなく転調を繰り返し、サビへ向かって盛り上がっていく。最後のフレーズに鳥肌を立ったところで、最終曲巨大獣が始まる。

 大阪夏の陣で、ものすごい上達ぶりを見せていたつっこが、また一回り大きくなった。

 今までのあやうげな緊張感はなく、安心して見ていられるようになったと今回のライブで感じた。

 いったん退場したつっこが、挨拶のため戻ってくる。

 いつものふざけた口調で、美T(ビューティー)と同じ言い方で「龍T、蝶T」の宣伝をする。「もう1曲歌ってくれたら、買うよ〜」という客の声に、本当に困りながら「でもね…新幹線の時間が…」と答えるつっこ。期待でいっぱいの客席のムードに、シャーマン2が奥からOKを出す。予定外のアンコールに、スタッフが用意したのは、アコースティックコーナーで使ったスツール。

「11月12日発売のSingleのカップリング。象。」

 予定外のアンコールが行われたのは、これが初めてのこと。このアンコールを引き出した名古屋の空気感に感動した。ぎゅうぎゅうに詰めて盛り上がっているわけではないのに、上品に熱い名古屋!やっぱり名古屋はいい!